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    ピティナピアノフェスティバル

    本日、上智大学にて音楽医科学センター主催のシンポジウムおよびピティナピアノフェスティバルが開催されました。

    前半は「音楽を感じる脳」と題し、東京大学教育学部特任教授の藤井進也先生が、
    後半は「音楽が傷つける脳」と題し、国立精神神経医療研究センター病院神経内科部長の坂本崇先生のレクチャーが行われました。

    藤井先生はドラマーでもあり、音楽に関する様々な研究をなさっています。
    日本は音楽売り上げでは世界的にトップレベルであっても、音楽関連の論文は少ないとのこと。
    テンポ良く繰り広げられるトークに惹きつけられ、あっという間の時間となりました。
    興味深かったのは、

    ・音楽は社会性とリンクする
    実験から得られたデータに基づいており、リズムやテンポ感という感覚が同期した人ほど、協調性が高いとのこと。

    今後も藤井先生の研究に期待が高まります。

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    続いて坂本先生は手の障害においては、弾けない症状や原因を正しく突き止めて治療を行うことが重要と仰います。

    ・力が入らないー中枢末梢神経・・・脳神経
    ・痛くて動かせないー骨、関節・・・整形
    ・緊張して震えるー精神的・・・心療内科
    ・余計な力が入るージストニア・・・神経内科

    それぞれの症状により対処法が異なるため、運動の司令と制御のどこに問題があるのかを突き止める必要があるということ。
    現在ジストニア治療においては難しい面もありますが、神経内科の名医である坂本先生のレクチャーは大変説得力があり、今後も様々な治療法の確立が期待されています。

    シンポジウムの最後にはピアニストお二人による連弾の演奏もあり、洗練された響きに幸せなひとときとなりました。

    続いて午後は、音楽医科学センター長の古屋晋一先生による講演
    「練習は脳を育む」

    上達に必要なものは練習量以外が8割とのお話。
    重要なのは、
    ・練習の質
    ・親のサポート
    ・良い教師
    ・身体の使い方
    ・メンタル・・・練習×メンタル=本番

    量に重きを置くと、疲労することで神経細胞に影響し、脳が変わるということでした。
    印象に残った点をいくつか挙げると、

    【育む練習】
    ・リズム練習
    ・ポジティブ思考
    ・身体への気づき
    ・力んでない身体部位を意識

    【育まない練習】
    ・無意識に反復のみ
    ・譜読みの姿勢 ー無理な体勢で呼吸を止めると筋肉の動きも止まる

    小さい頃の癖は一度身につくとなおすのに相当な時間を要し、一生残るため、指導においては責任感をもって注意深く観察・指導しなくてはなりません。
    またそれが故障のリスクを減らすことにも繋がります。

    【動きのレパートリー】
    表現の数=動きの数
    様々な動きのレパートリーをもつ(時代・作曲家によって)

    故障のリスクを減らせる
    冗長性を利用

    【エラーマネージメント】
    ・エラーをポジティブに活用する
    ・エラーの重要度をランク付け
    ・ゴールを高めに設定(120%)
    ・データを記録・活用ー失敗した時のデータを分析・応用
    ・「時間」の力を活用
    ・身体の認識度を高める
    ・色々な動きで練習する

    など、科学的な観点からのお話は普段なかなか伺うことのできない貴重な情報となりました。

    続いて、東京音大教授の土田 英介先生による
    「ベートーヴェン解析講座」〜初期のソナタを紐解く〜

    こちらも演奏・指導する上で大変勉強になることばかりでした。
    土田先生の解釈が大変分かりやすく、なるほど、と思うことばかりで、改めてベートーヴェンの天才ぶりを垣間見ることができました。
    弾くだけではもったいない、内容を理解してこそ何倍も楽しめるものだとつくづく思いました。

    充実したレクチャーの数々、非常に内容の濃い一日となりました。

    昨日は台風の影響で始発便から軒並み欠航、幸い午前の便で羽田上空まで来て着陸を試みるも、悪天候で着陸できず、再び熊本空港へ引き返すという始末‥。
    その後条件付きで再出発し、何とか無事に到着できた故の本日の収穫。
    何事も経験を蓄え、瞬時の判断力を鍛えなければとつくづく感じた日々でした。

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